暗闇の猫の視界
猫と生活した際認識することですが、彼等の身体能力の高さときたら、ヒトは驚かされることばかり。
身体の柔軟さや跳躍力、聴力、表現力……。(可愛らしさは言うまでもなく//)
その中でも、ネコノヒゲが興味津々なのが、猫の目。
電気を点けない部屋の中でも、僅かな光さえあれば、特に不自由なし。
これも、ヒトには備わっていない身体能力のひとつ。
でも一体、彼等は暗闇でどう見えているんだろう?
と、常々想像はしていたのですが……まさかの疑似体験ができたというお話。
そう、これも事務机の鍵と同様、本当に起こった「ネコノヒゲの奇妙なプチ体験シリーズ」のひとつです。
就寝時の光量。
好みもよると思いますが、ネコノヒゲは、部屋を真っ暗にする質。
ある夜、いつも通り電気の紐を引っ張って消灯(当時は紐の照明)し、日常の流れで身体が覚えている動作のまま、手探りでベッドにたどり着こうとしました。
が、消灯した途端、何の予兆もな突然く「それ」は起こったのです。
突然過ぎて、実は最初何が起こっているのかよく分からなかった……というのが、正直な感想。
???
……電気消したのに、ベッドがくっきり見えている??
ベッドの位置を手探りする途中の、珍妙なポーズのままフリーズ。
だって……探るも何も、フレームから枕からシーツの柄までしっかり気味悪いくらい「はっきり見えている」。
消灯したばかりの照明を見上げましたが、100%消えています。
なのに、紐がゆらゆら揺れているのまではっきり見える奇妙さ!
驚いて、他の光源を確認するべく、部屋中を見回しました。
が。
カーテン……閉まっています。
扉……こちらも閉まっているし。
光源となるモノなど、ありそうにない。
にも関わらず、うまく表現できないのですが、暗い中にも、なんだか部屋の中全体が明るく感じるのです。
???
恐る恐る、両手の平を顔に近づけてみました。
……手相占いで見る線、ちゃんと見えます。
部屋の中、歩き回って色々触れてみました。
椅子、机、本棚……「見えた」と思うものが確実にそこにあります。
書籍の背表紙の違いから、手に取って扉を開いた文字まで。
クローゼットの服も、形状も認識できれば、柄も全てわかります。
……呆然。
こんなことって、あるのでしょうか?
しかし、散々確認して落ち着いたところで、ふと、色の認識が全くできていないことに気がつきました。
形状や柄などの明暗は判別できるのですが、全てモノクロ。
取り出した服の柄を眺めながら、どこかで似た風景を見たことがあるな……と考え、思い至ったのは。
暗視カメラの画像!!
あれにそっくりなのです。
へー!リアルに体感すると、こんな感じなのかー。
と分かったところで、何故今この状況なのか全く説明できるはずもないので、明るい暗闇()の中、もう少し熟考。
痛いとか痒いとか、特に目に異常は感じられません。
ということは、目が映像を受容する組織の中で、一時的に何がしかのエラーが起こっている可能性が高い。
起こっているとすれば、色を認識する錐体ではなく、光を受容する「杆体(かんたい)」の方。
状況からすると、接触不良ではなく、接触過多??
しかも、一時的エラーが原因なら。
エラーが修正されたら、この面白くもレアな視界は消滅しちゃうのだろうか……。
つまらない。
ずっとこの視界が継続されたら、停電の時とか闇討ちしたい時とか、すごく便利なのになー。
30分程この状況を楽しみました(この間、ずっと暗視カメラ状態)が、寝て起きるだけで、通常モードに戻ってしまうのも悔しいので、いっそ自らの手でリセットしてみようと思いました。
惜しみつつ、一旦消灯した照明を点灯。
……眩しくも見慣れた、自室の風景。
そして、淡い期待を胸に再び消灯。
……暗転。
日常と変わらない、手探りしないとベッドにたどり着けない状態に逆戻り。
残念……やはりエラーだったようで、生暗視カメラ現象は何事もなくリセットされてしまいました。
これ以降、杆体は二度とエラーを起こすこともなく、現在に至るまで、未だ摩訶不思議な視界は再現されていません。
今後も恐らくないのでは……と何となく思っています。
けれど、ほんの30分だけでも、夜行性動物の視界を共有出来た、得難い貴重な体験でした。
以降、暗い室内を、猫が普通に歩く気配を感じるたび。
「ああ、あなた達には今、世界があんな感じに見えているんだね」と共感できますので。
どなたか、同じレア体験した方、いらっしゃったら語り合いません?
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