白黒なのにカラーに見える!錯覚画像
《錯覚 / 補色残像効果》
眩しい光が目に入った後に白い壁などを見ると、光の形がしばらく黒く残って見える……。
皆様も日常よく経験しますね。
この現象が「残像効果」と呼ばれるもの。
人の目や感覚は、急に遮断されても少しの間継続する構造なのです。
これは色に関しても同じで、ある色を一定秒数以上見つめた後、その色を視界から外すと、同じく残像として視覚上残って見えるのです。
ただし、光は「時間残像」、色は「補色残像(色相環 (color circle) で正反対に位置する関係の色)」と呼ばれ、性質に違いがあります。
※ 補色=色相環 (color circle) で正反対に位置する関係の色
この構造を利用したのが錯覚画像。
視覚上残った残像+モノクロ画像
の2つが重なった時、まるで色が付いているかのように感じる訳です。
人間の体って本当に謎だらけですね!
よろしければ、こちらの動画↓で実際に体感してみてください。
最初に出てくる画像の中央にある、黒い点を見続けた後、画面が切り替わります。
すると……!!
“錯覚-an optical illution- モノクロ写真に色がつく”
関連記事 → 青と黒 vs 白と金
※「もっと詳しく構造を知りたい!」と思われましたら……
続き ↓ でお楽しみください。
カラーに見える錯覚画像のしくみ 《前置き》
※ 前置き1〜3の後、本題です。
《前置き 1》
3色の星の画像をご用意しました。
お好きな色を1つ選び、上の「色がつく錯覚画像」と同じ要領で、中央の黒い点を20秒〜30秒程見つめてください。
その後、すばやく下の空白に目線を移すと……。
空白部分に、あるはずのない星が浮かび上がったように見えたと思います。
それだけでなく、最初に見た星と全く違う色なのがお分かりになったでしょうか。
(1回目で色の判別が難しかった方は、少し長めに見つめてみてくださいね。
でも、チャレンジしすぎには十分ご注意ください!)
「補色残像」とは、この残像のこと。
濃淡や色目に多少差があるかもしれませんが、恐らくこのイメージに近いかと。
(左から順に、赤・緑・青の後に感じたと思われる色)
最初に見た星の色と、残像の色(※目(=脳)が認識していると思われる濃さに修正しています)を、向かい合わせに配置してみれば……最初に出ていた「補色の関係」になっていることにお気づきでしょう。
オストワルトの色相環は、この関係を元に作られているのですね。
《前置き 2》
図工や美術の授業中、パレットに(無駄に)水彩絵具を全色出し、混ぜて遊ぶのに夢中になり過ぎて、先生にがっつり怒られたことのある方……ネコノヒゲ以外にもいらっしゃいますよね?
(余談:日本の虹は、この7色で教育を受けてきていますが、虹の色の設定は、国や文化によって配色・色の数等に違いがあります)
チューブの絵具を混ぜると、全く予想外の綺麗な色が生まれ、すっかり虜に。
で、次に思った事。
「出来上がった色同士を混ぜたら、見たこともない綺麗な色になるのでは?」
わくわくしつつ、混ぜ混ぜ。
……。
……あれ?
何でしょう、この小汚いネズミ色っぽいのは?
しかも、気がつけば筆洗いの水も、ばっちい系の色に。
予想外の出来事にがっかりしつつも、一縷の望みを託し、他色も投入して修正を試みた結果。
色調はどんどん手の付けられない方向に(……その上怒られた)。
この事からも推測可能かと思います。
「グレー」は、補色(=反対色)同士の組み合わせで作ることができるのです。
(※ 絵具(特に水彩)の場合は、元の成分や、他色を混合して作られている関係で、綺麗なグレーを作るのは難しいかもしれません)
《前置き 3》
目の器官が深く関係しますので、簡略化して図にしました。
※「カラーに見える錯覚画像」に関連した器官をピックアップしていますので、「大まかにこんな感じ」だと思ってください。
眼球の直径は平均約24mm。
眼球の内側にある網膜の厚みは、およそ0.2〜0.3mm。
(平均的なシャープ芯の直径が0.5mmなのを考えると、個人的には結構しっかりした感が)
何かを見た時、水晶体(カメラでいうところのレンズ部分)を通して、見たものの情報が網膜に伝達されます。
目の機能を「フィルムカメラ」に例えるなら、網膜は目の内側に貼られた「フィルム」に当たります。
※実は網膜では、映像が逆さまに認識されています。
……が、そのお話は別の機会にでも。
こちらは、拡大した網膜の断面図。
0.2mmの網膜には、視細胞(錐体・杆体)がびっしり。(イラスト内 紫色の細胞)
視細胞達は、感知した視覚情報を電気信号に変え、脳に向けて送ります。
↓ こんなルート ※ネコノヒゲ的イメージ図
★★★ 前置きのまとめ ★★★
1. 色にはそれぞれ、補色関係の色がある
2. グレーは、補色関係の色同士を混ぜても作れる
3. 目の網膜にある錐体が、色の情報を電気信号に変えて、脳の一次視覚野に向けて送る
カラーに見える錯覚画像のしくみ 《本題》
本題です。
……が、その前に、残念なお知らせです。
サイト内の「動いて見える錯覚画像 / エニグマ錯視」でも触れていますが。
「錯覚画像」と呼ばれるものは数あれど、実は「なぜ、そう見えるのか」という点。
正確には、現時点では、しくみがほとんど解明されていないのです。
カラーに見える錯覚画像もそのひとつ。
ただし、今のところ「こうじゃないの?」と有力視されている説はございますので、それをピックアップします。
《仮説》
神経節細胞(イラスト内 黄色い細胞)の一部が、反対色の信号も脳に送っている?
という仮説をイラストにしてみました。
(※視交叉と外側膝状体の部分を省略しています)
(例) = 青い画像を見つめた時の流れ =
画像を送る途中の神経節細胞(三次ニューロン)で、反対色(補色)に変換。
さらに、青い画像を見つめ続けると。
一次視覚野に連続して信号が送られるため、反対色もがっつり認識されます。
……この時、急にグレーの画像に切り替わると。
一次視覚野、青の反対色とグレーの反対色が混ざって、超混乱。
(※前置きでご説明したように、グレーは反対色を混ぜて作れます)
結果。
一次視覚野、混ざった色を「今見ている色」と誤認。
で、「……あれ???」となる、という説。
「白黒なのにカラーに見える錯覚画像」を見るたび、時差で脳が混乱しているのかも。
分かりにくいかもしれませんので、もう少しシンプルな絵で。
《前置き 1》で、3色の星の実験をしました。
ヒントは、「逆転の発想」。
「……補色を見つめ続けたら、反対の色が認識されるんじゃないの?」
と思われた方。
素晴らしい直感の持ち主ですね!!
それでは、メジェド様達とむぎ(仮名)に再登場して頂きましょう。
※一次視覚野に補色の伝達も行われていると仮定
重複しますので途中経過は飛ばします
むぎ(仮名)が補色の絵を錐体に知らせ、一次視覚野メジェド様が認識。
(並行して、反対色もちゃんと認識中)
20秒以上見つめて、反対色の余韻に浸っている一次視覚野メジェド様。
それが突然、同じ形状のモノクロ画像に変わると……。
余韻とモノクロ画像の中身が良い具合に混ざり、色のついたスイカを見ていると誤認識!!
……ということ(のようです)。
上に出てきた、オリジナルのスイカ錯覚画像を拡大しました。
お手製のため発色が甘いかもしれませんが、最初の動画と同じ要領でお試しくださいね。
(真ん中の種を見つめると、チャレンジしやすいかと思います)
じっくり見つめた後、素早く下に視線を!
目と脳
脳はいつも、五感から受け取ったあらゆるデータを恐ろしい程ハイスピードで認識・ストック・検索しています。
その中でも、脳が受け取る情報量の約80%が「目から」。
目の前にある「モノに触ろう」と思ったときなど、「触る時の力加減」や「距離」を計算しつつ「手を伸ばす」指令も出します。
誕生日ケーキの場合なら、
「本体は触っても大丈夫。危険ではなく柔らかい。でもローソクの炎には近づき過ぎると火傷する」
等、特に意識しなくても瞬時に判断している訳です。
大人は、より適正な力で対応出来ますが、経験値の少ない子どもは、データを蓄積するまでは加減が難しいのですね。(彼等は全力でケーキに手を突っ込んだりします……)
大人の脳には、びっくりする量の経験値が詰まっているのです。
「人間の目と脳の機能」を再現するべく、人型ロボット(見た目ではありません)を製作する業界の方々は、本当に長い間苦心してこられました。
特に難しいのが「経験値を増やして培った、微妙な匙加減」という点。
再現するの、本当に難しいのです。
なのに皆様、膨大なデータをストックした脳をお一人につき1個ずつお持ちで、その上、日常難なく使いこなしていらっしゃる。
……人間の脳って凄いと思うのです。
Zoltaxian(ゾルタクスゼイアン)の卵運びテストで優秀な成績を収めたSiriが、どのレベルまで進化するのか知りたい所です。
<余談>
「脳の判断と実物が違って、びっくり!」な体験例(日常編)
・重いつもりで気合を入れて持ち上げたバッグが、予想以上に軽くてへなちょこに
・冷蔵庫から出した麦茶を飲んだら、実は作り置きのめんつゆだった(→即リバース)
夏場の麦茶とめんつゆは、認識を誤って口に入れると、想像以上に驚きます。
区別しやすい容器で保存する方が望ましいですね……。
残像は、なぜ反対色?
仮説に対する疑問です。
「……なぜ、わざわざ反対色の信号を送るシステムが必要なの?」
元が「仮説」ですので、ネコノヒゲが好きに答えを考えても、有識者の方々に怒られることはないですよね……?(小心者)
ネコノヒゲが、「これが理由じゃないの?」と想像していること。
例えば、PCやテレビの液晶モニターが顕著だと思いますが、同じ映像を長時間映し続けていると、徐々に「画面焼け」が起こります。
ということは。
視細胞達も液晶画面みたいに、同じ色の信号ばかり送り続けていると、細胞組織に相当の負担がかかっちゃうのでは?
……その負担を軽減するために、補色の信号も送って中和する必要があるのでは?
などと考えているのですが。
自分が装着している目と脳に尋ねてみても、明確な回答は返ってこず、これが正解かどうかは全く不明です。
「ネコノヒゲの『仮説』の『仮説』」でした☆
「モノクロ画像が反転」する技
では最後に、『仮説』の『仮説』を踏まえた上で。
あなたご自身の脳内が繰り広げる、「モノクロ画像が反転」する技をご堪能ください。
(※ でも白と黒は補色関係ではありません、念のため)
@絵の中央にある、縦並びの点を30秒程凝視します。
Aその後、白い壁等に視界を移します。
(画像の下に、白い余白を空けておきましたので、宜しければご活用ください)
※ 感じ取りにくいようでしたら、@と同じ位凝視してみてくださいね。
(@Aとも、瞬きは極力しない方が、くっきり出やすいです)
……イエス・キリストの顔、見えました?