帝国ホテル / フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)
愛知県犬山市にある、100万u(=東京ドームの約21.38倍)という広大な敷地を持つ、野外博物館「明治村」。
なだらかな山間の地形と木々をそのまま活かした中に、明治時代に実際に活躍した建築物を移設・展示しています。
この一隅に、旧帝国ホテル本館の玄関部分……あのフランク・ロイド・ライト氏(Frank Lloyd Wright)が設計した傑作の一部が、今も現存しているのです。
実はネコノヒゲ、幼少の頃この「ライト館」を見学したことがありますが、何分子供でしたので「古いけれどかっこいいな」位のお粗末な感想。
が、幸いにも社会に出た後、その真価に気づくことに。
きっかけは、とあるエステティシャンの方から勧められた書籍。
「帝国ホテルが教えてくれたこと」というタイトルの、実際に帝国ホテルに勤めていた女性客室係の手記でした。
(その後も何故か、フランク・ロイド・ライト氏の名前に時折出会うこととなりますが、それはまたサイト内のどこかに……)
この本のお蔭で、再び明治村を訪れる気になったのです。
手記を綴った竹谷年子様は、1982年に黄綬褒章を授与された方。
建築物としての技術・デザインを堪能する以外に、日本が世界に誇る、一流ホテルの玄関口として活躍した現役時代を偲ぶ意味でも、事前にこの書籍に目を通して頂くと、一味違った目線からも感動できるかと思います。
大人になってから、改めて明治村の門をくぐってみると……本当に面白い。
幼少の時より何百倍も楽しめます。
ただ、広大な敷地に建物が点在するので、1つ1つをじっくり見るには、とても1日では足りないのが難点……。
(例えば、文学のお好きな方でしたら、森鴎外・夏目漱石住宅、幸田露伴住宅「蝸牛庵」をメインに回ってみる等の工夫が必要です)
明治村は全体が南北に長い形で、特に「ライト館」は、南端の入口から見ると最北に展示されているため、蒸気機関車(!)・市電・村内バスを活用する方が良いかもしれません。
建物に纏わる歴史を知るほど、建築物そのものの魅力にも虜になってしまい、複数回見学に参りましたが、全く飽きが来ません。
四季折々に色を変える山の緑や、時間と共に移り変わる空気や空を背景にしているせいでしょうか?
しかし、明治村の建築物を楽しんだ余波で、違うジャンルでの新しい楽しみ方も出来ました。
……映画やドラマのロケで、こちらの建物が良く使われているのですね。
短いシーンでも「あれ?」と気づくことがあると、ちょっと嬉しく感じます。
まるで知人が映った時のような感覚?
……「帝国ホテル」が最近撮影に使われたのは、某朝の連続テレビ小説で、蓮子様と石炭王が初めて会ったシーン。
でも、少しだけ疑問。
帝国ホテルの玄関の建築年代、大正時代ですが、何故か「明治村」村内に移築。
何か経緯がありそうなので、また調べてみたいと思います。
関連記事 →
・食器 フランク・ロイド・ライト / ノリタケ
・書籍 帝国ホテルが教えてくれたこと
・ほのぼのする小話 帝国ホテルのバイキング
ヨドコウ迎賓館 ( 旧山邑邸)
1923年竣工。
1974年、国の重要文化財に指定。
設計者が同じというだけに留まらず、帝国ホテルと印象が似通っていると感じさせる理由の一つに、大谷石が共通に用いていることも大きいと思います。
また、入口からのアプローチの天井があえて低く設計されているのも同じ。
あのアプローチと部屋に入った時の解放感、何かを思い出すな……と巡らせてみたところ、横穴を掘って作る野生動物の“巣”に思い当りました。
入口から続くトンネルは狭く、内部は広い。
ライト氏は、自然界に根差す建築物を設計していらっしゃったようですが、“巣”を意識したかどうかは分かりません。
ただ、彼から生み出された建築物が持つ独特の居心地よさは、人間が古代から営んできた生活様式の記憶を彷彿とさせるせいかもしれません。
ネコノヒゲ好みの、小雨が似合いそうな窓達。“あこがれ/愛 - Longing/Love”
風合いを出すため、ライト氏は銅板にわざわざ緑青を吹かせたとのことですが、その効果は十二分にデザインに反映されています。