照明 / TALIESIN( タリアセン) /フランク・ロイド・ライト
毎日の生活に光をもたらし、快適な空間作りのお手伝いをしてくれるもの。
……照明。
これは、直接的にも間接的にも欠かせない生活必需品。
大抵の照明器具は、その形状を見た段階で、どの様な光を投げかけてくれるのか、ある程度予測がつくと思います。
……が!
タリアセンのシリーズは、その予想を大きく(良い意味で)裏切ってくれます。
初見の印象。
「四角い木枠と板を組み合わせた、タワー状の木製間接照明」。
正直、建築家フランク・ロイド・ライト氏の名前を前面に押し出しただけの、お飾り照明かな、と、高を括っていました。
……が、そこは照明器具。
真骨頂は、点灯した時。
いやもう……薄闇の中でスイッチを入れた時の美しさときたら!!
計算し尽くされた、光の強弱。
取り付けられたボックスと板が醸し出す、陰影の妙や柔らかさ。
寛ぎ空間を広げつつも、決して照明自身が出しゃばり過ぎない「存在感なき存在」。
突如出現した、光の織りなす芸術作品に、思わず「おぉぉ〜〜!!」と唸り、しばし見とれてしまいました……。
大振り・小振り・吊り下げ式等、形状は様々ですが、メイン照明を落として使用するのであれば、やはり大振りタイプが最も向いています。
フランク・ロイド・ライト氏には色々と思う所があり、素直に認めるのはちょっと癪な気もするのですが、何の変哲もない部屋を一瞬で非日常に変えてしまう実力を持つ、本当に優れた照明だと思います。
でも、タリアセンという名の裏側にある、おどろおどろしい経緯の方は、余り深く知らない方が良かった気も……ちょっとだけします。
・建築物 帝国ホテル / フランク・ロイド・ライト
・書籍 帝国ホテルが教えてくれたこと
・ほのぼのする小話 帝国ホテルのバイキング
タリアセンの由来
※由来には少々血なまぐさい経緯がございます。ご了承頂けましたら、*〜**間を反転してお読みください。
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「タリアセン」とは、フランク・ロイド・ライトの母アナが、彼の生まれ故郷ウィスコンシンのヘレナ・ヴァレーに、最初に買い与えた土地で、そこにライトが名付けた名称。
ウェールズ人の詩人である神秘主義者の名前から採った名で、居住地の位置から「輝ける額」と訳されている。
1914年春、妻キャサリンと六人の子供達とは別に、ロイドの愛人であるメイマー・チェイニーと彼女の二人の子供(ジョンとマーサ)をこの地に呼び寄せ、仕事場兼居住地とした。
しかし、ここに建てた家・事務所は、三度の火災に見舞われている。
特に最初の火事(1914年8月15日)は、精神錯乱した使用人によって、メイマーと二人の子供他、計七人が斧で惨殺され、更にガソリンを撒いて放火されるという惨劇だった。
死後、ライトの墓はこの地にあったが、残された三人目の妻オルギヴァンナは、今際の際に、彼の遺体を取り出して火葬し、自分の墓に一緒に入れるよう遺言(実際に実行された)。
愛する夫と共に眠るのを望むと同時に、愛人との思い出の地を安息場所にするのを許さなかったとも推測されている。
温もりのある木製の箱型や木片で構成されたデザインの照明は、ライトが幼少時この地で親しんた、木製知育玩具「ギフツ」「オキュペーションズ」の面影があるようにネコノヒゲは思います。
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TALIESIN 1( タリアセン 1)
帝国ホテルの記事でも少々触れていますが、兵庫県にあるヨドコウ迎賓館 ( 旧山邑邸)も、ライト氏の意匠がふんだんに反映されています。
館内には「タリアセン1」のを置している部屋もあります(フロア/ミニ)。
元々はライト氏の自宅用デザインだったそうですが、邸内の雰囲気に溶け込んでいる様子が流石の一言です。
チェリーとウォルナットの色違い。
デスク用。
奥にフロアライト。まるで、この部屋のために誂えた家具のような印象。