ヴォイニッチ手稿(ヴォイニック写本)
目の前に書籍として存在し、ページもめくれるのに、未だ誰も読めない本。
それが「ヴォイニッチ手稿(ヴォイニック写本)/“Voynich Manuscript”」と名付けられた奇書。
「いや、仮に文字が違って読めないといっても、せめて見当くらいつくでしょ?
古文書とか解読しちゃう学者もいる位だし」
↓
高名な言語学者や暗号学者がこぞって解読にチャレンジするも、次々玉砕
世界規模で見当がつかず、現在も未解読
……という、ネコノヒゲが瞳孔全開で飛びつく、大好物の類。
うむ!気持ち良い位読めません!!
文字っぽいものだけでなく、未知の植物や、一糸まとわぬ姿で水(?)に浸かった女性達(裸のニンフ)、天文っぽい図などの謎のイラストも、てんこ盛り。
《発見場所と名前》
本が発見されたのは1912年。
場所は、イタリアにあるモンドラゴーネ寺院(Villa Mondragone) 内。
(所在地: Via Frascati, 51, 00040 Monte Porzio Catone Roma)
発見者は、ウィルフリッド・ヴォイニッチ氏(Wilfrid Michael Voynich)、古物商兼愛書家。
この方のお名前にちなんで「ヴォイニッチ手稿」と呼ばれています。
《本の状態》
全230ページ。
材質は羊皮紙。
原本は現在、イェール大学付属バイネキー稀書手稿ライブラリ(Beinecke Rare Book & Manuscript Library, Yale University Library)に所蔵。
近年、紙の放射性元素を測定したことで、本体の年代が1404年〜1438年なのは特定。
(4つのページから1×6mm程切り取って測定したそうです)
測定者は、アリゾナ大学の物理学科の准教授グレッグ・ホギンズ博士(Greg Hodgins,The University of Arizona)達。
(……でも、古い紙に後から書き加えることだってあるので、同じ年代に書かれたかどうかまでは
分からないと思うのですけれど……その辺りはどうなのでしょう?)
《中身あれこれ》
・(配列から)左から右に読み書きする
・別のシートを重ねて読むタイプの暗号(視覚復号型秘密分散)ではない
・別添付の辞書(コードブック)を使って読むタイプの暗号ではない
・(挿絵等から)6種の学問(?)に分けて記述されているらしい
・たとえ解読できても、物凄い予言とかの類ではない感じ
といったことまでは、おぼろげに分かっているようです。
6種の学問(?)の分類:
@ 植物学
A 天文学・占星術
B 生物学(温泉学?)
C メダイヨン(=メダル 宇宙と地理関連?)
D 薬学
E 鍵(薬草と医学?)
※DとEは連動しているらしい?
《本物?でっち上げ?》
「誰も解読できない」となると、無性に解読したくなるのが人の常。
けれど、あまりの難解さに「いたずら」「インチキ」という説も並行して出ており……。
ですが、2013年6月21日「この古文書は統計的に意味を為す文体を保っている事が証明された」という発表がございました。
( → 米科学誌Plos One )
「ヴォイニッチ手稿のキーワードと共起パターン:情報理論的解析」
“Keywords and Co-Occurrence Patterns in the Voynich Manuscript: An Information-
Theoretic Analysis”
発表者: マルセロ・モンテムッロ Marcelo A. Montemurro / ダミアン・ ザネッティ Damian H. Zanette
オーサー: ハンガリー科学アカデミー 科学顧問 アッティラ・ソルノク博士(Attila Szolnoki, Hungarian Academy of Sciences, Hungary)
「でっち上げ」で片付けられたら、世界中で解読に取り組んできた方々の努力が水の泡ですし、何より未知のロマンが1個消滅してしまうところでした。
これで、安心して解読作業が続けられますね!
←壮大な謎解きのお供に。
ヴォイニッチ手稿の原本は、劣化防止のため現在直接閲覧が規制されていますが、こちらのサイトで写真閲覧できます。
関連記事 → クリプトス(Kryptos) =まだ解けていない暗号=
クリプトス(Kryptos) =まだ解けていない暗号= その2
ヴォイニッチ写本の謎
《ヴォイニッチ写本の謎》
発行年: 2006年
著者: ゲリー・ケネディ(Gerry Kennedy)
ロブ・チャーチル(Rob Chuechill)
訳者: 松田和也
発行所: 青土社
ヴォイニッチ手稿の「謎」そのものだけでなく、「物言わぬ『謎の本』」を中心に、解読にエネルギーを注ぐ人々にも焦点を当てた書籍。
※著者の1人ゲリー・ケネディ氏は、ヴォイニッチ夫妻の末裔
本を発見したヴォイニッチ氏のプロフィールに始まり、当時から現代に至るまで、「謎の本」に魅了された様々なジャンルの方の奮闘ぶりが記されています。
植物学、天文学、占星術、薬学、暗号学、美術史、書籍史……。
「暗号解読」のパターンあれこれも紹介されておりますので、暗号好きの方もお楽しみ頂けるのではないでしょうか。
諸事情がございますので、小さめに。
1ヶ所だけEVA書体の掲載ページがございます。
……そういえば、世にこのような文言が出回っております。
この手稿を解読しようと試みるものは皆、人生の貴重な時間をまったく成果のない調査に費やすことになるであろう。
「無駄」と呼ばれるもの達をこよなく愛するネコノヒゲ、こう解釈したいと思います。
この手稿を解読しようという、一見成果の見えない類の事に、貴重な時間を使って情熱を傾ける人生があってもいい。
「ヴォイニッチ手稿を解読した、最初の人物」という「名声・栄誉・満足感」を求める姿。
それは、存在の不確かな財宝を探し求めるトレジャーハンターにも似ている気がします。
もし機会があれば、世界中のヴォイニッチェロ(Voynicheros)同士で交流を深めるのも、ものすごく有意義で楽しそうです!
※ヴォイニッチェロ(一人ならVoynichero)=ヴォイニッチ手稿の熱狂的ファンのこと
≒シャーロック・ホームズの「シャーロキアン」のような意味合い?少し違います??
ヴォイニッチ手稿 -続報 一部クラッキングした強者現る!?-
2014年4月10日。
イギリスのベッドフォードシャー大学(University of Bedfordshire)にて、応用言語学のステファン・バックス教授(Stephen Bax, Professor of Applied Linguistics)による非公式の特別公演が行われました。
テーマは勿論「ヴォイニッチ手稿」!!!
彼は同2014年1月1日、複数の単語を読むことが出来たと発表しており、4月の公演は、その一部の詳細について行われたものです。
→ A proposed partial decoding of the Voynich script
(ヴォイニッチ・スクリプトの部分的解読に関する提案)
バックス教授が着目したのは、アラビア語・セム系・ナワトル語他アジア言語・今は失われたエリアの言語と、中世に描かれたハーブのイラスト。そして、植物に着目。
・アラビア語の呼称パターン
・ヘブライ語の呼称呼称パターン
・[f15v]の先頭の単語と[f16r]の右上角・3段落目の先頭の単語
それらの共通点を元に、[f31r]の“kooton コットン”を導き出したそうです。
現時点で彼が「復号化した」と発表している単語数: 10
※ /・/ =eの上下反転した記号
KNT/・/IRN(KANTARON: Centaurea ヤグルマギク)[f2r]
KNT/・/IR CH/・/UR(Centaur Chiron: ケンタウルスカイロン)[f2r]
KA/・/UR(Hellebore: ヘリボー)[f3v]
Ksar(Kesar : Indian Crocus インディアン クローカス)[f27r]
KA/・/UR CHAR(Nigella Sativa: ニゲラサティバ ※クミンの仲間)[f29v]
Kooton(Cotton: コットン)[f31r]
KOORATU??(Coriander: コリアンダー ??=1文字読み方不明)[f41r]
TAURS(Taurus: 牡牛座 ※プレアデス星団の側の単語) [f68r]
しかし、相手は600年解読不能の由緒正しき(?)奇書。
一部正しく解読できていたとして、書籍全ての検証と解読には、余裕で数ヶ月〜数年。
もし方向が違うようなら、さらに軌道修正!(……泣いてもいいですか?)
果たして、ネコノヒゲが生まれてこのかた捧げ持つロウソクの灯火が消えるまでに、間に合うかどうか。
一人の人間の持ち時間なんて、本当に短いのだなーと、しみじみ。
でも、楽しみと不安が織り交ざった、一種独特の高揚感がございます()
裸のニンフが意味するものは、一体何なのでしょうね??