舟を編む

 

 

 

「本の香り」を脳内に再現してくれる書籍。

 

古本屋の独特な香りと、相反する製本されたばかりの新書の香りと、そのどちらもが抱える「悠久の時」を感じます。

 

 

読み終えて表紙を閉じた時、……表紙に込められた言外のメッセージにも気づくことになります。

 

大変に心憎い演出でした。

 

 

この本の中に綴られている言葉は、どこを取っても美しいです。

 

「言葉を集めて編み、まとめた辞書」を表現する作品にふさわしく、吟味・洗練された日本語で綴られている。

 

例えるなら、無駄を削ぎ落とした「和の美」の集約。

 

利休が、床の間に活けた一輪の朝顔を際立たせるために庭の朝顔を全て摘んでしまったエピソードを思い出しました。

 

作品内では和食がそれを暗喩しているかな、とも想像しましたが、和菓子モチーフも捨てがたい。(これは単に個人的な好みの部分でですが)

 

 

書斎や図書館のように本を沢山所蔵する場所で読み終えたら、なお一層感慨深いかと思います。

 

もしそういう環境で本の表紙を閉じたなら、きっと本達が、読み手に向かって口々に一斉に語りかけてくる錯覚を起こすのではないでしょうか。

 

文字好きのネコノヒゲ、殊更お気に入りの作品となりました。

 

 

映画の方は、映像に起こすにあたって配役など少々の変更はございましたが、原作の持つ「香り」を忠実に再現してくださったことに大満足です。

 

 サイト内記事 →  映画「舟を編む」

 



 

 

 

 


 
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