勝手に「伝説」と呼んでいるコンビニ
以前アルバイトをしていたコンビニの小ネタです。(※でも長文)
当時住んでいた場所から程近く、面接に行って即採用だったので、特に深く考えず勤務していたのですが……。
ある日、ふと気がつきました。
バイトの子達のルックスが……何と申しましょうか、一定水準を相当超えている。
早い話、24時間どのシフトも、美少女&イケメンだらけ。
お好みかどうかはさておき、女性陣は三田友梨佳をほんわかしたようなキャラを始め、アイドルのオーディションに通っても「やっぱりね〜」と納得する子達。
もちろん男性陣も負けてはいません。
ジャニーズ系・小池徹平似・風間俊介似・玉木宏似レベルを取り揃え、にっこり「いらっしゃいませー!!」と、爽やかにお出迎え。
このようなパラダイスコンビニが、とある病院の真正面に実在しました。
……立地上、主なご利用者は、ハードな病院勤務の方々、患者様方やそのご家族。
日々の看護・介護に疲れた方々が、この笑顔に癒されない訳がございません。
思いつく限り列挙してみても。
治療側にのしかかる、患者様に対する体調・完治への重圧。
ご家族が憂慮する、患者様のこの先の治療方法や費用の工面。
患者様が抱く、面倒を見てくれる家族の気遣いに、何も返せないもどかしさ経由の愛情から来る八つ当たりやジレンマ。
自分の意思に反して、思うように動かない不自由な身体への怒り。
諸々の思いに対するストレスは、どれだけのものかと思うと、想像しただけでもヘコみます。
お互いに愛情も思いやりもあります、もちろん。
でも、24時間剥き出しの感情をぶつけられたら、心が疲れないはずがありません。
息抜きも兼ねて、用事や買い物を済ませるのに訪れるこのコンビニが、どれだけの癒やしをもたらしたかは、あくまでお客様が判断されることかと思います。
けれど、「あら?今日は○○ちゃんお休み〜?」(名札で皆名前覚えられていました)と、連れ立ってご来店の、年配の女性客様達(病院内で知り合ったお知り合い同士と推測)が顔を見合わせてがっかりし、「残念ね……でも、また明日来ましょうね♪」と病院に戻る後ろ姿を見送る回数が増え。
憔悴した、仕事が終わった病院勤務の方々の、顔色の変化を察知できるようになり。
お店の従業員同士で、
「○○君、今日の昼間、こういうお二人連れが来て、顔見たがってたよ」と伝えた時、
「ああ、あのお母さん達ですね。この間お父さん薬変えたから経過が心配って言ってましたね〜」と、最新情報を聞いてみたり。
「××さん(常連の長期入院患者さん)、外出禁止されてるのに、今日点滴ガラガラ引きながらお店に来てたよ」というような、心配な情報なども共有したり。
(ほとんど看護師さんの申し送り状態……主に看護側の情報でしたけれど)
そんな事が重なるにつれ、心に曇りなく、皆、患者さんとその看護者様、病院勤務者様を、温かく見守っていることに気づきました。
性根の腐りかけた頃のネコノヒゲ、何度も自問自答しました。
……こんなことって本当にあるんだろうか?
……偽善者ぶってるだけじゃないのか??
……ルックスも申し分なく良い上に、ここまで他人の気持ちを思いやれるピュアピュアな子達が、ここ一箇所に集中するなんて有り得ない。
……何かメリット目的にしているだけじゃないのか???(失敬)
でも……一人一人のプロフィールを知るうち、徐々に分かってきました。
早くにお父様を亡くし、希望大学医学部の奨学金を受けるため、生活費を入れながら、ハードスケジュールで勉強しつつ奮闘していたり。
家庭の事情で別居している心臓疾患の母親に、お小遣いを送ったり。
障がいのある妹への仕送りに、睡眠時間削って掛け持ちバイトを増やすためにここにいたり。
このコンビニでお仕事しているのは、様々な事情を抱えた子ばかりだったのです。
アルバイトとは言え、もちろん仕事。
何もかもが楽しい事ばかりではありません。
時には、お客様の苛立ちをダイレクトにぶつけられて落ち込んだり。
将来への不安や、抱えているプライベートの重圧に心折れそうになって、勤務時間後に泣いている子も実はいました。
でも、気を取り直して顔を洗い、頑張って(半泣き顔ですが)笑って帰る。
そんなアルバイト同士、時に声をかけ、慰め、励まし、事情によっては快くシフトを代わったり。
口下手な子は黙ってお小遣いでお菓子を買い、落ち込んでいる子の傍らにそっと置いたり。
他人の痛みを受け止める器を持ち合せた、心優しき子達の集団。
表面上は、美少女&イケメンを取り揃えた、一見華やかでチャラチャラしたコンビニだったかもしれません。
……でも。
立地条件や従業員のルックスは二の次。
人の気持ちを思いやる人間性を備えた人員を揃えて初めて、あの立地条件で愛される店舗が成立したのだと、曲がりくねっていたネコノヒゲにもようやく理解できたのでした。
後々思えば、オーナーの意向だったのかもしれませんが、かといってここまで良い人材を揃えられる手腕の人は、そうそういません。
(ここを認めると、ちょっと負けた気がして悔しい感はあります())
勤務場所で出会う仲間は、流動的であることも多く。
あの時と同じメンツで仕事をする機会など、二度と巡ってこないことは、一時でも社会に出た方であれば良くご承知かと思います。
でも、だからこそ。
今も勝手に「伝説のコンビニ」と心の中で呼んでいる、本当に良い店。
……毎日の生活の中で、風景に溶け込んで見過ごしがちなことは多いと思いますが。
あなたの事を優しく見守り、心に掛けている人は、思わぬ形で案外身近に存在するのかもしれません。
……長々と思い出話にお付き合いくださり、ありがとうございました。
※このコンビニに心当たりがある方々へ、プチメッセージ。
……オーナー。
すちゃらかで女好きでへらへらしてたけれど(失礼)、あなた
は只者じゃなかったと未だに思っていますよ()
……一緒に仕事してくれた方々。
ネコノヒゲが転居のためお店を離れることになった時。
半泣きで、寄ってたかって山盛り餞別くれたこと、忘れていません。
外見でなく。
自分以外の人のために踏ん張る本当の姿の方を、私は心底「かっこいい」「可愛い」
と感じました。
あんなに餞別くれなくったって、同じ場所で仕事出来た時間の方が特別なのに……。
(しっかり受け取りましたけどね())
どうか皆に、幸多かれ。
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