義珍の拳

 

 発行年: 2009年

 

 著者: 今野敏

 

 出版: 集英社文庫

 

 「沖縄唐手」=「空手」を本土に伝承した、「松濤館流」の開祖、冨名腰

 

 義珍(ふなこし ぎちん)の一生を描いた作品。

 

 

 

 

 

 

 

 

貧しかったが家柄は良く、学力にも長けているものの、肉体的にも精神的にもひ弱だった亀寿(かめじゅ=幼名)。

 

ある日の学校帰り、豪商の息子で体格も良い、近所のリーダー格である朝雄とその手下に取り囲まれる。

 

「侍(さむれー)の子だから、俺達を馬鹿にしている」と胸の内を見透かされ「前から気に入らなかった」とさらに因縁を吹っかけられ。

 

「親父にも殴られたことない」「病弱なお坊ちゃま」が、生まれて初めて人から胸を突かれた上、膝蹴りを喰らう。

 

亀寿、大ピンチ!!

 

 

……と、そこに通りかかった、救世主。

 

「みっともない真似はやめろと言っているんだ」

 

顔を上げると、そこに仁王立ちになっているのは、安里村の領主の息子、安里長吉。

 

驚いたことに、飄々とした長吉に多勢で飛び掛った手下達が、あっという間に地面に倒れていく……。

 

 

「やっつけてくださいよ」とたきつける手下にも、長吉にもそれ以上余計なことは言わず、引き上げを促す朝雄。

 

唖然とする亀寿に、

 

「私が喧嘩をしたことは内緒だぞ。父に知れたら、えらいことになる」と長吉。

 

「体を鍛えて強くなれば、朝雄なんかにいじめられることもなくなる」

 

これ以降、亀寿は長吉と交流を深めるようになり……。

 

 

プロローグ的には超ベタですが、実話に基づいた展開ですし、何よりネコノヒゲ好みの展開。

 

(水戸黄門や暴れん坊将軍大好き)

 

ですが、読み進めるうち、時代の流れに翻弄されながらも、口数少なく、己の守るべきものを貫いた者のストイックな生き様が浮かび上がってくるのです。

 

淡々と語られますので、読み手の好みによっては、少々ぶっきらぼうな印象を受けるかもしれませんが、この語り方、却って義珍の性質を表す相乗効果もあるのでは?……と感じてもいます。

 

 

こちらの作品、スポーツ好きな方(自己鍛錬・観戦含)は特に、義珍の生涯に対して色々共感できる点が多いのではないでしょうか。

 

ネコノヒゲ、紹介されて気軽に読み始め、最後うるうるしてしまいました。

 

書籍は、ジャンルに拘らず、まず手に取って開く姿勢が大切だな、と再認識した出会いでした。

 



 


 
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