江戸切子
世界中の人々を魅了して止まない、光を美しく反射させるカットグラス。
見知らぬ異国のペルシャからはるばる海を越え、初めて日本にやってきたのは4〜5世紀頃。
そしてフランシスコ・ザビエルの手によって再訪したのが16世紀頃。
国産のカットグラスが初めて制作されたのが江戸時代初期。
その後明治になると、イギリスからカットグラスの技術者を招致し、さらに技術が磨き上げられることになります。
日本でのカットグラス技法を「切子」と呼びます。
中でも江戸切子は、独自のカラーやオリジナル模様を持ち、根強いファンに愛され続けています。
《ガラスの原材料》
ガラスの主成分は珪石ですが、他の原材料によって特徴や名称が変わります。
クリスタルガラス …… 珪石・鉛・炭酸カリ
ソーダ石灰ガラス …… 珪石・石灰・ソーダ灰
クリスタルガラスは鉛を含むため、ソーダ石灰ガラスに比べ重量があるのが特徴で、花瓶などにも向いています。
またカット面の煌めきが華やかですので、高級品に用いられることが多いです。
ソーダ石灰ガラス製品は、日常使いのコップなどで多用されています。
このソーダ石灰ガラスの表面に色を被せたのが「色被せ(いろきせ)ガラス」で、着色の原料はコバルト(青の発色)等です。
色着せガラスに切子細工を施すと、その部分が無色になり、様々な表情を作り上げることができます。
《切子細工の工程》
ガラス工場で作成した製品に着色したものに、手作業で切子細工を施します。
・窯焚き …… 原料を「るつぼ」の中に入れて溶かす
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・色被せ …… 透明なガラスの表面に色ガラスで着色
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・成形 …… 宙吹きの場合:色被せガラスを型に入れ、吹棹(ふきざお)を回しながら息を吹き込み形を整える
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・除冷 …… ガラスの熱をゆっくり時間をかけて冷やす(=ガラスは急激な温度変化で割れてしまうため)
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・検査 …… ひび・歪み等の有無をチェックする
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・割り出し(割り付け) …… 模様の下絵となる線を筆やペンで引く
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・荒摺(あらずり) …… 中心となる模様を砥石車(ダイヤモンドホイール)で削って彫る
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・三番掛け …… 模様をさらに太く、又は細かく削る
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・石掛け …… 削った加工面を砥石で平らにし、滑らかにする(砥石は模様により目の粗さを様々に使い分ける)
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・研磨 …… 加工面を磨き粉で磨き上げる(木製・ブラシ製等の研削盤につけながら磨く)
研磨後にぬるま湯で洗浄した製品は検査をし、研磨が不足している場合は再度磨き直します。
大変手間のかかる手作業ですが、熟練の技を駆使して一つひとつ丹念に生産された切子達はこのような工程を経て、宝石のように輝きを放つ素晴らしい製品となるのです。
切子の歴史や複雑な模様を生み出す技に思いを馳せつつ、光にかざしてその美しさを堪能するのも、また楽しいものです。