アラビアン・ナイト/千夜一夜物語
「アラビアン・ナイト」と聞いた時、皆様は最初にどんな物語をイメージ
しますか?
幼少の頃でしたら、真っ先に「シンドバットの冒険」や「アリババと四十
人の盗賊」「アラジンと魔法のランプ」を思い浮かべたのですが、学
生時代に、このイメージを根底から覆す出会いが。
少々御縁があり、学生時代、「千夜一夜物語」の完訳全11巻をそっくりget。
もちろん大歓迎。
「千夜一夜物語」というからには、きっと物語が1001個あるに違いないと、ケース付ハードカバーの綺麗なセットにほくほく。
早速開けてみると。
……。
……。
なるほど。
「千夜一夜物語」がスタートするに至る大元の筋は。
かつて奥さんから手酷い裏切りに遭い、その後、次々お嫁さんを貰っては、一晩で殺してしまうようになった王様を諌めるため、大臣の娘シャハラザード姫とその妹姫が、毎晩王様に物語を聞かせていく……という所から始まります。
そして姫が「続きは明日」形式にすることで、物語の先を知りたい王様は、姫達を殺すことを思いとどまり続け……その集大成が「千夜一夜」。
全巻通して、分かったことは沢山ありました。
・「千夜一夜物語」とは、「一晩にお話がひとつ」という訳ではなく、大筋の理由から、実は1話が何日にも分けて語られていて、それが千一夜に渡っていることからついたネーミング
(=姫が語る物語の数自体は、1001話より少ない)
・子供向けの有名なお話は、幾つかの話をブレンドして後年創作されたもの
・話に出てくる登場人物が、ストーリーの流れで別の話を語り始めたり、さらに、その中に出てくる人物がまた話を始めたり……という特徴がある
(章・節・項のような感じでしょうか? 又は 「「「 」」」? )
・挿絵がほぼ皆無
(後日判明したのですが、宗教上の理由からのようです)
・アッラーを讃える文言が頻出する
・独特の言い回しや表現が多数ある
(ex. 老人への呼びかけ=「私の叔父さん・叔母さん」)
・婚姻関係に、びっくりするほど身分階級が絡んでこない
(ネタバレですが、亀と結婚する王子様の話も……種族まで超える奔放さ……)
・激しい片想いに落ちた男性は、泣いたり、病気になって命を落としかねないほど恋焦がれる
挙げればきりがありませんが、何しろ全編通して、様々な恋愛描写が多い。
一目惚れ・横恋慕・不倫・同性愛……何でもありな上、さらっと健康的にですが、一夜を共にする描写が当たり前のようにぽこぽこ出てきます。
それに、女性が顔を覆って晒さない慣習なのは分かりましたが、身体の方は顔ほど隠さないと申しますか……。(奴隷に至っては、上半身は何も着けないのがスタンダード?)
恋愛あり、豪華な食事あり、冒険あり、魔神あり、言葉を喋る動物もあり。
時に王様や大金持ちの商人・美男美女を交え、艶っぽい描写や、時には残虐な刑罰。
独特の言い回しで豪華絢爛に織りなす、ショートストーリーの数々。
この本を譲って下さった方も、もし内容を把握していたなら、多感なお年頃の学生には譲らなかったかもしれません()
「アラビアン・ナイト/千夜一夜物語」の完訳の方は、王様も思わず続きが知りたくなるような大人向けの読み物。
それを知っていると、子供向けの本を目にした時、心の中でだけでですがニヤッとなります()
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