シュヴァルの理想宮
「シュヴァルの理想宮(Palais ideal du facteur Cheval)」という建築物をご存知でしょうか。
裏観光名所とも言われるこちらの建物は、フランス南部、ドローム県オートリーブという街にあります。
(他の観光地から少し位置が離れているようですが、観光地として整備万端)
それが、こちら。
アンコールワット遺跡やガウディの建築物を連想しましたが、建物自体は高さ10m×幅14m×長さ14mと、宮殿という呼称にしてはやや小振り。
そして一種不気味さも感じます。
しかし、何がすごいかといって。
フェルディナン・シュヴァルという郵便配達員さんが、
自分がつまづいた、妙な形の石(「躓きの石」)をきっかけに、
土木建築の知識皆無の中、全て自ら拾い集めた石を材料に使い、
村人達から奇人・変人扱いをされながらも、
33年という歳月をかけて、自力で作り上げてしまった理想宮
(※製作を開始したのは43歳〜)
……という背景もさることながら、どの角度から見ても、同じモチーフが1つとしてないという、圧巻の総ハンドメイドぶり。
かつてはパブロ・ピカソも通い、今も様々なアーティス
ト達がインスピレーションを感じ取る場所。
シュヴァル氏の人生は何かと不遇だったようですが、理
想宮は、現在フランス政府により国の重要建造物に指定
されているとのこと。
長い長い歳月をかけて完成された、彼自身の集大成。
少しでも経緯を知りたいと思い、読んでみました。
「……彼は、人生をありのままに受け入れることができず、同時に人生からも拒まれた人間だったようだ。(『郵便配達夫シュヴァルの理想宮 』P.29より)」
かなり端折りますが、恐らく周囲から「偏屈」と称される人物だったのは確かなようです。
けれど、時を経てなお見る者の琴線を激しく揺さぶるのは、この理想宮を完成させた一途な想い。
その激しさに、人は惹きつけられずにいられないのでしょう。
シュヴァル氏の背景を探っているうちに、とあるAC広告のCMを思い出しました。
もちろんディテールは違いますが、根底に共通点を感じる気がします。
サイト内記事 → CM「黒い絵」